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『ブルー・タワー』 今月の10冊(笑)

今月の10冊。ほー、小説はもしかしてこれ1冊だけ? まあいいですけれども。しかも、『ブルー・タワー』なのか(笑)。売れてるんですかね。うーん(笑)。うーん(笑)。うーん(笑)。いや、売れてるんでしょうね。
私にとっては、この小説は、ストーリーと仕立てが、陳腐なのだ。SFとしては、細部の詰めが、甘すぎるという印象がある。黄魔ウィルスって、実際どういうものなのか、とかね。
いや、話の焦点はそこじゃなくて主人公の冒険にあるんだと言うのならば、まあ、確かに。ただ、ハードボイルドでなくちゃいかんというわけじゃないが、主人公としては、やや、「やわ」……?
つまり、SFとしては、朝松健の『夜の果ての街』あたりと比べてしまうし、単なる冒険小説としてなら、ジャック・ヒギンズの諸作品あたりと比較してしまうので、全体的に、「ものたりない」と感じてしまうわけだ。

ある意味で、(作品のレベルは違うかもしらんが)〈ハリー・ポッター〉シリーズと似ている気もする。マニア受けはしないが、一般受けはする作品という事だ。普段、SFなどに馴染みがない人が読んでも、クラクラとしない程度にSFであり、冒険小説慣れしていない人が読んでもついていけるくらいに、冒険してるのだろう。うん、たぶん、きっと、そうだ(笑)。

ところで、この作家は、女性を書くのが苦手なんでしょかね? なんか、読んでいて「むー」と感じるのは、そのへんもありそうなんだが。ていうか、今時、ひたすら思ってるだけのヒロインはないんじゃないか。『トゥームレイダー』みたいにとは言わないけれども、もうちょっと、ジリツしたキャラにしていてもいいんじゃないかなあ? もちろん、そのためには、ある程度女性キャラの扱いがわかっていないと書けないんで、それが苦手なら、ステロタイプなものを1つ出しておいて、あとは避けるっていうのも、ありはありなんだろうけど。つまらなくはあるよね。行動の先が読めてしまうから。当然、相手する男キャラの反応も、見えてしまうので、そこらへんが、作品のドライブ感を損なっているとも言える。いっそ、女性キャラでなくても良かったのになあ(笑)。

『ブルー・タワー』(石田衣良 徳間書店)
『夜の果ての街』(朝松健 光文社)



著者: 石田 衣良
タイトル: ブルータワー

『謎の円盤UFO』 ふるーいテレビシリーズのノベライズ

今、イギリスのドラマシリーズっていうと、『名探偵ポアロ』とか、それに代表されるような、ミステリのシリーズが多いよね。でも、昔はSFのシリーズもあった!

たとえば、『謎の円盤UFO』。
言っておくが、この場合、気軽に”ゆ~ふぉ~♪”なんて読んでもらっちゃ困る。
イギリスらしく、カチッとペダンティックに、「ユーエフオー」、でなくちゃね。

多分、日本で放映されたのは70年代だと思う。てことは、放映を見て、憶えている人って、40代後半くらいから、上の世代なんだろうな。もっとも、私のように、SF大会に通ったようなファンだと、何かの拍子に上映会で見たりした事もある(笑)。

これがなかなか凄いんだよ。月基地(ルナベース)は、女性の隊員だけが勤務しているんだけど、それが、銀ぴかのぴったりした衣装に(まあこれはいいいんだけどね)、なーぜーか! 紫のかつらをかぶってるの!

なんで紫? なんでかつら? てか、浮かび上がらないですかそれ?

あ、ちなみに、なんの隊員かというと、「地球防衛機構SHADO(シャドー)」の隊員なのだ。秘密組織らしい。司令は、ストレイカーという名前の、白髪の冷徹な男で、渋くてかっこいい(女性ファンがたくさんいるらしー)。

そういえば、確か、男の隊員の、搭乗服って、なんか編み目タイツみたいなシャツだったような気がする。成層圏とか、下手すりゃ月基地で機動するのに、寒くないのかなあ。

ともかく、いろいろキッチュで、渋くて、やりとりがクールで、アメリカの『スタートレック』とは一線を画していますってな感じの、そういうSFドラマシリーズだったっぽい。

衛星放送でやってくれないかな(笑)。

『謎の円盤UFO』(1)(2)(ロバート・マイアル作 ハヤカワ文庫SF)


著者: ロバート・マイアル, 風見 潤
タイトル: 謎の円盤UFO 1 (1)



著者: ロバート・マイアル
タイトル: 謎の円盤UFO(2)



著者: 伊藤 秀明, 池田 憲章
タイトル: 謎の円盤UFOアルバム



著者: Darts
タイトル: 謎の円盤UFO・スーパーガイド

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『くますけと一緒に』 ココロを開く話

新井素子作品というと、私はどちらかといえば、エッセイの方が好きだったりする。小説は、読むより、むかーしNHKがラジオドラマでやってくれた形の方が良かったな。なので、これは、珍しくも私が単行本で読んでしまった小説のひとつだ(笑)。

といっても、エッセイの、ユーモアたっぷり、ちょっと「ぼけら~」としていて、かつ、日だまりのように温かな、ああいう「新井素子作品」のイメージとは、うってかわって、かなり「お~も~い~」という物語なのだった。なんつっても、まず、お葬式から始まってしまう! 残されたのは、くまのぬいぐるみをかかえた、いたいけな女の子。

いや、それだけなら、お涙頂戴です。ここで女の子は
「お母さんキライ。お父さんキライ」
こう思ってたんですよ。お父さんもお母さんもだいきらいー! なのに死んじゃった。

きっつー。

しかも、両親の事故死は、
「もしかして、あたしがあんな事をしたから神様が怒ったのかも?」

そこまで落としちゃいますか? いきなり冒頭から、ずずーんとどん底です。

ここまでくれば、わかっちゃった人もいると思うけれども、これは、そうやって、何重にもカラに閉じこもっちゃった女の子。それを、まるで、そうっと植木鉢に植えて、日にあて、水をやり、大切に育てて、ココロの花を開かせていく、そういう話なのだ。その過程が、実にすばらしい。最近の流行なら、カウンセリングにいこうかーどうしようかーとか、まあそういった事になるのかもしれないけれども、まず、出てくるのは、たこさんウィンナーのお弁当。そして、(当時流行った)ミステリアスな貯金箱。

貯金箱のシーンは、ちょうど話のクライマックスなんだけど、実にいいです。

あと、やはり、血がつながってなくても、親子にはなれるものだし、血がつながってなくても、親子になれない親子はあるっていう感じが、そこはかとなく漂ってくる。仮に、この本を若いうちに読んでたとしたら、大人になって、結婚して、子供ができてからもう一度読むといいかなあって凄く思う。

で、新井素子ファンなら、自明の事ですが(というのは、新井素子さんは、SF界で誰知らぬ者とてない、ぬいぐるみ好き! なので)、この物語では、くますけという名前のぬいぐるみが、大活躍なのだ。人形というのは、もともと、持ち主と対話できるものだけれども、ぬいぐるみって、ふかふかしていて、ぎゅうっとだきしめる事で、人をほっとさせる働きがあるのだそうだ。そういうぬいぐるみの効果が語られまくり。それも、声を大にして、ではなく、さりげな~く(笑)。

まあでも、やっぱり、ちょっと重い話では、あるんだよねー。

『くますけと一緒に』(新井素子作 大陸書房)


著者: 新井 素子
タイトル: くますけと一緒に

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『ダヤンとタシルの王子』

↑腰巻のダヤンがかわいかったので腰巻を下に添付して表紙をスキャンしました↑

「ジタンかっこいい!」
「風の王しぶーい!」
「子猫かわいーい!」
「セがびじーん!」
「ダヤンすごーい!」

……失礼しましたー(笑)。
これは、今年の5月に出た、小説版わちふぃーるどの4巻で、物語としては、ダイレクトに、3巻『ダヤンと時の魔法』の続編というか、むしろ「後半」にあたる。そして、アビルトークと、わちふぃーるどと、タシルと、そして何と言ってもジタンの謎が、いろいろと解き明かされるのだ。

ぐああ、ネタバレしそうである(笑)。

ともかく、わちふぃーるどのファンなら、置くあたわざる本で、一気に読んでしまうのは間違いない。だってねえ。ジタンの正体がとうとう明らかになるんだよ。もっとも、その後なぜジタンが、ダヤンを待ちつつ(になるのかな)、サーカス団と関わりを持ったりしたのかとか、そういう事は、まだまだ、謎のままだ。

ジタンって、謎の猫だから、あまり全てが解明されてしまってもいかんかな、とは思う(笑)。謎っていうのは、魅力のひとつなんだから。

ところで、今回の『ダヤンと時の魔法』そして『ダヤンとタシルの王子』は、元来ファンタジー色の強い、わちふぃーるどの物語としては、珍しく、SF的な要素も、かなり強いのだ。なぜなら、時の魔法という言葉である程度わかる通り、時間旅行が扱われているからね。もちろん、もともとSFとして書かれているわけではないから、タイムパラドックスなどの扱いとか、トラップとか、そういうものは、盛り込まれていないけれども、単純に、時間をさかのぼって過去のタシルやフォーンの森、サンドなどを訪れたダヤンが、目を見張るさま。見慣れていたものがちゃんとあったり、逆になかったり、できたりと、「時」のギャップを読者にもいろいろ楽しませてくれるのだ。

ダヤンジタンたちと、風たち、そして魔王軍との戦いは、見事なクライマックス。かわいい子猫(正体は読んでのお楽しみ)とキマイラのかかわり、誘拐となかなか手に汗握る脱出劇をサイドストーリーとして、物語もちゃんと大団円を迎えるし、言う事ないなあ。

いや、まじで。猫好きなら、わちふぃーるどのぞいてみましょう。わちふぃーるど好きなら、『ダヤンと時の魔法』『ダヤンとタシルの王子』はぜひぜひ。お勧めっす( ‥)/

『ダヤンとタシルの王子』『ダヤンと時の魔法』(池田あきこ作・画 ほるぷ出版)著者: 池田 あきこ
タイトル: ダヤンとタシルの王子―Dayan in Wachifield〈4〉

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『鏡の森』 タニス・リーの新刊

ええっ。タニス・リーの新刊なんて出てたの? という人も、相当数おられるのではあるまいか。だってね、思いもしなかったようなところから出てるんだよ。それは産業編集センター。はさまれてる新刊案内を見ても、確かに、小説らしきものも多少は並んでいるんだけれども、SFもファンタジイも他にはないよねえ……。なんだか、唐突です(笑)。但し、ここからタニス・リーが出るのは2冊目。1冊目は『バイティング・サン』というSFで、これはまた後にとりあげたいと思う。

さて、『鏡の森』だが、併記されている原題は、White as sinow 。ここからも想像される通り、ベースになってるのは、『白雪姫』なのだ。

もちろん、何かの民話とか伝説とか、そういったものを下敷きに、別の物語を作るという手法はあるわけなんだけど、「おおーっ」という出来のものはなかなかないよね。でも、『影に歌えば』を読んだ人ならわかる通り、タニス・リーは、その手法の名手といっていいと思う。

単なる白雪姫ではなく、二重の白雪姫。それが可能なのは、乙女=母=祖母(魔女)という、三相の女神をそこに持ってきているからだ。三相の女神に関しては『月と太陽の魔道師』という作品でタニス・リーは扱っているのだけれども、今回はわかりやすく、ギリシアのデメテル神話をも持ってきている。
研究者や、その手の学問に関心の深い者は別として、白雪姫とデメテル神話の組み合わせは、それだけで「おーっ」というところも多そうだ。また、タニス・リーならでは! と手を打ち合わせる人もいるかな。

物語の中には、多様な象徴が「砕かれたガラスのかけらのごとく」無数にちりばめられていて、頭がくらくらしそうだ。人間の中にある「非人間性」が、いろいろな面から描き出され、それが、「白」「黒」「赤」という民話三原色にくっきりと彩られて、ガラスの板を通して世界を見ているかのような、不思議な情景をかたちづくっている。
まるで、読者が、鏡を通して世界を見ているかのようだ。(さて、その場合読者は鏡の中から魔女を見ているのだろうか? それとも魔女となって鏡を通して世界を見ているのだろうか?)
『死霊の都』などでも、タニス・リーは、そういった、人間/人間と近似の存在?/非人間という、多層構造の異質さを描いてみせてるが、それがもっと発展しているようにも思われる。

また、「愛」というモチーフから、この物語を読む事もできそうだ。単なる男女の愛だけでなく、親子の愛というものも、絡む。シンプルに、
「愛されずに育った子供は、愛するすべを知らない。どうすればいいですか?」
という、現代的なテーマで読み解いていく事も、多分、できるだろう。

一気に読み切っても、色とりどりのガラスの破片をぶちまけ、積み上げたごとく、いろいろなものが詰め込まれているので、物語の全貌を楽しむには、二度、三度、読み返すのが良いかも。

『鏡の森』(タニス・リー作 産業編集センター刊)
『影に歌えば』 (タニス・リー作 ハヤカワ文庫FT)
『死霊の都』 (タニス・リー作 ハヤカワ文庫FT)



著者: タニス リー, Tanith Lee, 環 早苗
タイトル: 鏡の森

ダヤンとわちふぃーるど物語

これは、先に出た小説版のダヤン3冊分をまとめた愛蔵版。だから、文章自体は、全く変わっていない。なのに、なぜまた、愛蔵版を買うのか!

それはひとえに、
「絵が全部カラーになってるから」
これに尽きる。

やっぱりね、わちふぃーるどはカラーに限るじゃないか。白黒でもそれはそれなりに味があるのだけれども、カラーはいい。カラーはいいぞー! 文章の端の、カットまで、カラーになってるんだからな。

とくべつなねこ、ダヤンと、なぞめいたねこ、ジタン。そしてわちふぃーるどの様々な、動物の住人たち。そして、彼らを狙う北の魔王!

愛蔵版『ダヤンとわちふぃーるど物語』(池田あきこ作 ほるぷ出版)
☆ダヤン、わちふぃーるどへ
☆ダヤンとジタン
☆ダヤンと時の魔法


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著者: 池田 あきこ
タイトル: 愛蔵版 ダヤンとわちふぃーるど物語

『妖精図鑑』 フランスの妖精たち

この本は、確か、絵本のコーナーで見つけたのだ。実際、全ページカラーのイラストレーションで飾られており、絵本と言えない事はない。
「なあーんだ、絵本の妖精図鑑~?」
もっと専門的なやつが、たとえばキャサリン・ブリッグスのなんかがあるよね。
と、思う?

ブリッグスの『妖精事典』は、確かに凄い。凄いが、そこで扱われてるのは、ほとんど、イギリス諸島のものだけなんだよ。

そして、この『妖精図鑑』は、フランスの妖精たちを紹介しているのだ。だから、ブリッグスの本では見た事も聞いた事もないようなのも、たくさん、登場する。もちろん、ブリッグスの本に入ってるやつもいるんだけれどもね。
ていうか、作っている人がフランスの人。だから、ヨーロッパの妖精を紹介しようとしても、当然、中にフランスのものがたくさん入っているという事なのだろう。普通、妖精をもうらした本というと、どうしてもイギリスのものとかが多いんで、フランスの妖精ってとってもマイナーなんだよね。

だから、ヨーロッパの妖精が好き! というの人には、絶対おすすめの図鑑なのだ。

『妖精図鑑』全4巻(ピエール・デュボア著 ロラン・サバティエ画 文溪堂)
『妖精事典』(キャサリン・ブリッグス編著 冨山房)



著者: ピエール デュボア, Pierre Dubois, Roland Sabatier, つじ かおり, ロラン サバティエ
タイトル: 妖精図鑑―海と草原の精



著者: ピエール デュボア, Pierre Dubois, Roland Sabatier, 鈴木 めぐみ, ロラン サバティエ
タイトル: 妖精図鑑―森と大地の精



著者: ピエール デュボア, Pierre Dubois, Roland Sabatier, つじ かおり, ロラン サバティエ
タイトル: 妖精図鑑―空と風の精



著者: ピエール デュボア, Pierre Dubois, Roland Sabatier, つじ かおり, ロラン サバティエ
タイトル: 妖精図鑑―花と水の精


※本記事に対する海外からのスパムTBが増大しているため、やむなく本記事に限り、TBの受付を停止しています。あしからずご了承下さい。 (2006/07/08)

〈スレイヤーズ〉と〈風の大陸〉

富士見ファンタジア文庫の長編人気シリーズといえば、この2つが思い浮かぶかな。どちらも、ファンタジイであり、どちらも、少数のグループが世界を救うために旅をするという組み立ては同じだと思う。

でも、人気の大きさは、どちらかといえば、〈スレイヤーズ〉の方がでかいよね。

これ、いhとつには、〈スレイヤーズ〉がギャグの要素を含んでいるからじゃないかと思うのだ。含むというか、場合によっては、かなーり、ギャグ仕立てで進行しているとも言える。しかも、本編がシリアスに重くなるに従って、外伝ではさらにドタバタが演じられる、その両方が並行して出てるので、同じキャラで2度おいしいという現象が起きているのだ!

ライトノベルなんてあんなものは……という意見も、たまに聞くけれども、実は、
「若い者(子供)にもわかりやすく」
「どんどん読めるようなエネルギーがあり」
「ストーリーとして一貫している」
という厳しい条件が、課せられているのだ。
これは相当の筆力がないと、できない事だと思うよ。特に、子供にわかるようにというやつ! 編集部の方針というのは時によってかわるので、今はどうだか知らないが、確か、〈スレイヤーズ〉全盛期に富士見ファンタジアの狙っていたメインの読者層は、「小学生」なのだ!

小学生向けにしても大丈夫なように書く。しかも、実際には、ファンレターをくれる10~20代の読者が楽しめるように書く。むぅ。考えようによっては、大人向けに書く方がずっと簡単だ。

その点、〈風の大陸〉は、〈スレイヤーズ〉ほど広い層の読者は確保できていないんじゃないかな。というのは、中学生~高校生の、本が好きな子なら、手にとって楽しく読むかもしれないけれども、小学生~中学生くらいだったら、どうだろう? ちょっと苦しいような気がする。もしかして、作者が、若い読者層に向けて書こうとして、無理をしてるんじゃないかという気がする事もあるくらい。むしろ、大人が楽しめるような、ある程度うんちくを語れるような小説の方が書きたいんじゃないかなあ、と。

実際、同じ竹河聖作品では、大人向けに書かれたものの方が、楽しめるんだよなあ。

〈スレイヤーズ〉(神坂一作 富士見ファンタジア文庫)
〈風の大陸〉(竹河聖作 富士見ファンタジア文庫)



著者: 神坂 一, トミイ大塚, あらいずみ るい
タイトル: スレイヤーズ水竜王の騎士 (1)



著者: 竹河 聖
タイトル: 風の大陸〈第25部〉大祭司

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〈スコーリア戦史〉 サイボーグは長命か?

最近、キャサリン・アサロの〈スコーリア戦史〉を一気読みした。これは、アメリカ版『星界の紋章』と言われたやつだ。おそらくそれは、このシリーズにも、アーヴみたく遺伝子をばりばりに改良した結果生まれた種族が出てくるからだろう。但し、敵役だけどね。逆に主人公側は、特定の血統がスコーリアという星間帝国を維持するために必須なのだが、その血統は遺伝子改良などをする事が不可能という側に属するのだ。

つまり、相対する2者が、まるっきり違う立場に立っているというだけでなく、スコーリア側の問題の血統が、エンパシー能力が顕著な特徴であるに対して、相手側は、エンパシー(というか、共感能力)に先天的に欠けていて、エンパスを拷問する事で快感を得られ、従って彼らにとってエンパスは貴重な奴隷である、という図式も存在する。うひょぅ。

まあそこらへんも考察するといろいろと面白いのだが!

今日、ふっと考えたのは、
「長命を欲する時にサイボーグってどうなのよ」
これだ。

スコーリアでは、わりとふつーに、サイボーグ化が行われている。特に、問題の血統の子女は、優秀なエンパスであるがゆえになれる特殊な戦士だが、そのために、どうしても、サイボーグにならなければならないのだった。但し、『サイボーグ009』と違って、ナノマシンがばりばりに使われてます。

まあ、この連中は王族だったり軍人だったりするので、サイボーグになった場合の、体のメンテは、あんまり考えなくてもよさげ。でも、単に長命を求めるためにサイボーグ化したら……。

機械って、永遠にもつものじゃないよね。それどころか、パソコンとか車とか、何年サイクルで買い換えるかを考えると~。メンテそのものに金がかかりそうだし、バージョンアップに手術が必要かもしれず、最悪、手術とかしても「もうそのタイプに対応するパーツとかアプリはないです」って言われちゃったら!

すげ~怖いよね。

やっぱ、人体改造って怖そうだ。

〈スコーリア戦史〉(キャサリン・アサロ作 ハヤカワ文庫SF)
『星界の紋章』『星界の戦旗』(盛岡浩之作 ハヤカワ文庫JA)
『サイボーグ009』(石森章太郎または石ノ森章太郎作 サンデーコミックス他)



著者: キャサリン アサロ, Chatherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 飛翔せよ、閃光の虚空(そら)へ!―スコーリア戦史



著者: キャサリン アサロ, Catherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 稲妻よ、聖なる星をめざせ!―スコーリア戦史



著者: キャサリン アサロ, Catherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 制覇せよ、光輝の海を!〈上〉―スコーリア戦史



著者: キャサリン アサロ, Catherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 制覇せよ、光輝の海を!〈下〉



著者: キャサリン アサロ, Catherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 目覚めよ、女王戦士の翼!〈上〉―スコーリア戦史



著者: キャサリン アサロ, Catherine Asaro, 中原 尚哉
タイトル: 目覚めよ、女王戦士の翼!〈下〉―スコーリア戦史

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〈スケルトン探偵〉 人類学と探偵

昔と違って、最近の名探偵は、探偵が本業じゃなかったりする。「スケルトン探偵」もその一人。ていうか、主人公は、探偵って呼ばれるのを嫌がる人類学者なのだ。専門は、「骨」。骨を調べて、それがどんな人物だったかを鑑定するのが本業。

本業が人類学者だから、アウトドアが好き。発掘が好き。骨は
「なるべく古く、乾いているのがいいね」
という事で、死んだばかりの人の骨が持ち込まれたりすると、
「げー」
骨に肉がついていたりすると、
「勘弁してくれプリーズ」
という顔を、ろこーつに、見せるのだった。

ミステリというのは、だいたい、探偵が錯綜した事実の中から、真実を突き止める経緯が面白いわけなんだけれども、スケルトン探偵は、現場なんかまず一切調べないといってもいいし(例外はある)、作業と思考過程のほとんどは、骨を並べたり手にとったりするための場所で経過する。

面白いですよ。骨についての、ウンチク。

私などは、真犯人とかそゆのは、もう、どーでも良くて、その骨はどんな骨なのかなー、ギデオンなんて言うかなーっていうあたりが、ハッキリ言って、興味の中心になってます。

なんていうと、まるっきりアクションなんかないだろ、とか思うと、これがさにあらず。アウトドアが大好きな主人公のこととて、ちゃんと、外に出たり、
「おいそれはちょっと危ないんじゃないの」
なところに入り込んだり、あるいは逆に、レンジャーな奥さんの影響もあってか、どんどこ野外に出たりするので、シーン的にもどんどん動いていく。但し、都会ではなく、おおむね、田舎です。アメリカでも南米でもフランスでも……常に田舎。

最近、新刊が出ないのが、ちょーっと寂しいね。

〈スケルトン探偵シリーズ〉(アーロン・エルキンズ作 ハヤカワ文庫ミステリアス・プレス)


著者: アーロン エルキンズ, 青木 久恵, アーロン・エルキンズ
タイトル: 古い骨



著者: アーロン エルキンズ, 青木 久恵, アーロン・エルキンズ
タイトル: 暗い森



著者: アーロン エルキンズ, Aaron Elkins, 青木 久恵
タイトル: 死者の心臓



著者: アーロン・エルキンズ, 青木 久恵
タイトル: 遺骨



著者: アーロン エルキンズ, Aaron Elkins, 青木 久恵
タイトル: 断崖の骨



著者: アーロン エルキンズ, 青木 久恵, アーロン・エルキンズ
タイトル: 呪い!



著者: アーロン エルキンズ, 青木 久恵
タイトル: 楽園の骨



著者: アーロン エルキンズ, Aaron Elkins, 青木 久恵
タイトル: 洞窟の骨

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