真実の魔術師 | 手当たり次第の本棚

真実の魔術師

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三部作の最終巻ではふたつの大きなイベントが進行します。

ひとつは、シオニーの魔術師試験。
2年の実習期間を終えて(最短ですね)、いよいよ最終試験に挑むわけです。
記憶力がチートなシオニーですが、学校も2年、実習も2年……ほんとに最短で魔術師になろうとしています。
しかしここで問題が!

どうも、異性の指導者と実習生という組み合わせでは、ふしだらな事が起こりやすいらしく、それが教育委員会で問題になっているのです。
スキャンダルでさえ新聞で報道されてしまうほど。
幸い、シオニーとエメリーの仲は、アヴィオスキー先生しか知らないのですが、
「エメリーはシオニーを愛しているから贔屓しているのだ」
とは絶対に言われたくない!
と、エメリーは考えます。
そこでこれを絶対回避するために何をしたか?
本来、採取試験は指導者が行うものなのですが、それをあえて別の折り師に頼む事にしました。
しかも、エメリーを毛嫌いしている魔術師に。
それは誰あろう、かつて学生の頃、エメリーが苛めた相手。プリットだったのです!

もうひとつは勿論、切除師の問題です。
1巻ではライラ、2巻ではグラスを撃破したシオニーですが、もうひとり残っていましたね。
そうあのインド人です。
グラスよりある意味では悪のインド人が、死刑にされる直前、脱走した、というニュースをシオニーは耳にしてしまいました。
これでおとなしくしていられるようなら、まあ、シオニーではないわけです。

個人的な意見ですが、シオニーのように、約束を守らず、自分のやりたい事に突っ走るような人は、仕事を任せる相手として信頼できるものではない、と思います。
そういうシオニーの性格を知っているから、自分に黙って勝手なこと(勝手な追跡)はしないとシオニーに約束させますが、実はエメリー自身、同じような性質を持っている。それを知っているシオニーはエメリーにも同じ約束をさせて、プリットの家へ出発するんです。

あ~あ。
無理だって。
無理、無理。
……やっぱり無理でした~!

ふたりともそんな約束まもれっこないですからねえw
というわけでふたりはまず、独自に相手を追い始め、最終的にはタッグを組んで戦う事になります。
シオニーはなんと、紙の魔術の他に、精錬師、練り師、可塑師、玻璃師……切除師以外の全ての力を使う事ができるようになっていました!(チートすぎるw)
これをうまく切り替えながら戦い、一方のエメリーはさすが熟練の折り師です。ラストのラストでは、とんでもない技を見せてくれるのです。
かっこいいぞ。

エピローグでは、読者お楽しみの大団円となるのですが、私は少し不満を残しました。

エピローグで決着がつくのは、シオニーとエメリーの仲「だけ」なんですよ。
シオニーが全ての魔術を使えるという事をどうするのか!
これを知っているのは、まだ、エメリーとアヴィオスキー師だけで、決着はついていないんですよねえ。

そもそも、この魔術の設定は大変面白いものだと思います。
シリーズとして、もうちょっと続きを書いてほしいなあ、と思います。
シオニーが最初の最初にエメリーの心臓の中で見た、シオニーとエメリーと子供たち……あれ、実際に見たいですよねえ。