『神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト』 | 手当たり次第の本棚

『神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト』


ポリ白、これにて完結。最後まで一気に読める面白さであることは間違いないのだが、どうしても乗り切れない部分がある。
このシェアードワールドのメインである特にポリ赤で頻繁に出てくるものなのだが、精霊と楽士が戦うシーンは違和感がぬぐいきれないのだ。

いや、コンセプトは凄く面白いと思うんだけど、考えてもみてほしい。
2台の音響機器を置く。
そして、それぞれ違うCDをかけました。
どのように聞こえるであろうか?
おのおのがすばらしい音楽であったとしても、音がぶつかりあったとたん、そこには騒音しか生じないはずだ。
せっかくの面白いコンセプトなのだから、そこをなんとか工夫できなかったものか?

もうひとつ。
楽器に関する知識の低さに」うめく。
ポリ白では、前半でも、幼い少女のシラユキが、「コントラバスを演奏する」という無理なシーンが登場した。
体格の問題から、これは相当の無理が出る。
コンバスのネックを左手にとって弦をおさえつつ、弓をひくとなると、それなりの体の大きさがどうしても必要。

今回は、海辺でハープシコードを演奏する(ハープシコードってわりと管理の難しいものなのでこれもちょっと繭をひそめてしまうのだが)、その演奏中、音量が大きくなるという描写があるのだ。
あー。
無理だからね、これ。
作者は、ハープシコードの演奏をちゃんと聴いた事があるのだろうか。
ピアノと異なり、ハープシコードは、張られた弦を、ハンマー(鍵盤)で操作するツメでひっかけて音を出す。
強弱は事実上つけられないといっていい。
そもそも、鍵盤楽器で強弱をつける事が難しく、それを大いに可能としたのがピアノなのであって、だからこそ音の強弱をつけられるという意味をこめて、ピアノフォルテ(ピアノ)という名前が楽器につけられたのだ。

以上の2点から、もう対決シーンが違和感ばりばりなのだ。
そこさえ気にしなければ、ほんとに面白いんだけどね。
(まあ、専門的な知識が全くなければ、楽器の部分はスルーする事ができると思うんだけど)。

女神と精霊、人間の関係というやつは、シェアードワールドそのものに大きく影響を与える要素で、目のつけどころが面白いし、さすがライトノベル、キャラクターがいきいきしているのも魅力。
しかし、このような違和感を乗り越えるだけの力強さは、残念ながら最終巻には感じられなかった。
非常に残念だ。


神曲奏界ポリフォニカ ネバーエンディング・ホワイト (GA文庫)/高殿 円
2011年11月30日初版(発売中)