『ガリレオの苦悩』 | 手当たり次第の本棚

『ガリレオの苦悩』


日本はまだまだ男権社会だと言われている。
もちろん、昔に比べれば、「女性の社会進出」はめざましいのだろうけれども、進出してもその後がない、という分析結果が出ているのだそうだ。
まあ大家に、結婚する、妊娠出産する、子育てする……ということが、社会的にサポートされているとは言えない。
そこに生じるさまざまな歪みをとりあげたのかと思えるのだ、
それぞれの短編に登場する女性たちは、個々にいろいろな悩みをかかえている。
誰が殺され、誰が殺したかというところも、もちろんストーリーの根幹ではあるけれど、むしろそこに関わる女性たちに焦点があてられている。
たとえば、第2編目は、奇抜なトリックや、昔ながらの本格推理そのままの複雑な家庭の事情にからむ犯罪という仕掛け、それが、ある女性を中心に展開する。
古いスタイルを踏襲する一方、それを刷新している。
そして、科学とミステリというそれだけで美味しいとりあわせに、もう一点、現代日本のさまざまな女性(の苦労)を挿入する事で、さらに興味深い物語にしているのだと思う。

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落下る(おちる)
操縦る(あやつる)
密室る(とじる)
指標す(しめす)
攪乱す(みだす)
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ガリレオの苦悩 (文春文庫)/東野 圭吾
2011年10月10日初版(文庫版)