『百年の呪い』〈新・古着屋総兵衛2〉 | 手当たり次第の本棚

『百年の呪い』〈新・古着屋総兵衛2〉


当代の総兵衛は、今風に言うと、日経ヴェトナム人であり、今回あらためて日本に帰化したということになる。
もちろん、日本人とヴェトナム人の両方の血が流れているのだけれど、写真などでヴェトナムの人々を見る限り、いわゆる、日本の「南方系」の顔立ちと、そう違っているとは思われない。
ゆえに、本巻で、襲名したばかりの総兵衛に、一部の人々が、どことなく異国の香りを感じるとしたら、それは彼が生まれ育った異国の文化の影響であろうかと思う。
長らく食べてきた異国の料理がかもしだす微妙なにおい、立ち居振る舞い、これらのために、観察眼の鋭い人などは、通常の日本人との違いを感じるのだろう。

そして、ヴェトナムから率いてきた一族には、一日もはやく日本人となる事を求めながらも、総兵衛、裏の顔を見せる時は、加齢な異国的ないでたちなのだ。
前シリーズでは、いさあか歌舞伎的な味わいがあったけれども、今回は同じけれん味でも、異国趣味がうまく塚wれてりう。
また、こういう派手な演出が、この作者は得意だ。
すがすがしく、かつ派手やか、ヒーローの名にふさわしい。

一方、彼がまず対決しなくてはならないものが、百年かけた呪いというのも、ちょっと面白い。
中国から伝わった風水をベースにした呪術のようだけれど、それをつきとめるのが、ヴェトナムの……というか、中華系下と名無人の占術師だ。
当然、こちらも風水などは心得ている人物だろうけれど、同じ中国系呪術を用いて、日本人とヴェトナム人が対決するという絵なのだ。
同じ源流であっても、発展方向は少しずつずれているだろう。
そういう違いが、おそらくこのシリーズでも、巧みな木細工を作っていくに違いない。

まさしく、時代小説でありながら、「国際的」。
江戸時代以前が舞台ならいざしらず、鎖国をしていた時代のものであるのに、国際色豊かというのも、ユニークだ。


百年の呪い―新・古着屋総兵衛〈第2巻〉 (新潮文庫)/佐伯 泰英
2011年10月1日初版