『竜王戴冠 1~8』〈時の車輪5〉 | 手当たり次第の本棚

『竜王戴冠 1~8』〈時の車輪5〉



ランド・アル=ソアはティアに続いてケーリエンを手に入れる。
エレインとナイニーヴはタンチコを逃れ、大道芸人の一座に隠れてアマディシアを抜け、サリダールへ向かう。
まさしく全界全てを巻き込む争乱のなか、注目どころはマットとナイニーヴだろう。

竜王の再来として自他共に認められたランド・アル=ソア,アイール人賢者のもとで夢見人の修行にいそしむえぐうぇーん、トゥリバーズの領主、金目の大将軍として祭り上げられたペリンを追うように、まず、マットが独り立ちする。
ルイディーンで手にした鑓とメダル、そして予言の意味はまだ明らかにされぬものの、ますますマネサレンの英雄たちの記憶がマットの中に入り込んでいく。
それと同時に、「頭の中で転がるダイス」というユニークな現象によって、単に強運のギャンブラーというだけではなく、無意識に、軍事にすぐれた指揮者として覚醒していくのが面白い。
衰退される形で指導者となっていったペリンと、道筋は似ているようにもみえるが、古代の記憶に侵食されるという点で大きく異なるし、それが特定の人格のものではないというところが、ランド・アル=ソアとも異なる。
メリンドラとの関係も、甘く切ない展開が待ち受けている。
マットの手勢、赤手軍も、ここでできあがる。

一方、ナイニーヴがたどるのは、茨の道だ。
絶対力に関してはいわば天才である彼女は、指導を受ける前に絶対力を独力で使うようになった「暴れ馬」ならではの壁にぶつかるとともに、村の賢女として思うがままにふるまってきたことによる性格を、いやおうなしに自ら矯めなくてはならぬハメに陥る。
さらに、闇セダーイという強敵が荒wれて深甚な恐怖を味わう。
男女間のことについてもいろいろな初体験があり、エレインとナイニーヴの間に、新たにビルギッテという存在が登場したことにより、エレインとの不仲、そして疎外感も味わう事になってしまうのだ。
自分でも内心は認め、まわりからも指摘されるとおり、ナイニーヴの行動はある意味支離滅裂で、幼稚なものとなっていく。
かわいそうなほどだ。
絶対量kに関する部分だけでなく、ナイニーヴはいろいろな面で、無礼楠r-しなくてはならない状況に陥ってしまうのが物語のこの部分だ。

しかし、主要人物がこのように華々しく活躍する一方で、ちょい役や脇役にも、光った存在があるというのは面白いし、凄い。
たとえば、竜王の旗手を務めることになったペヴィンという男。
争乱のさなか、一人ずつ家族をうしなっていたという以外は、ごくごく平凡な男なのだが、その彼がどのようにして旗手をつとめるに至り、どのようにふるまっているか。
登場期間はこの第5部のみという短さであるにもかかわらず、なかなか印象深い。


竜王戴冠〈1〉選ばれし者たち―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈2〉“竜王の壁”を越えて―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈3〉旅の大道芸人―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈4〉青アジャの砦―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈5〉勇者ビルギッテ―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈6〉ケーリエン攻防戦―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈7〉旅路の果て―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
竜王戴冠〈8〉竜王の旗のもとに―「時の車輪」シリーズ第5部 (ハヤカワ文庫FT)/ロバート ジョーダン
2001年5月~2001年12月