『新宿魔族殺人事件』〈耳袋秘帖7〉(だいわ文庫版) | 手当たり次第の本棚

『新宿魔族殺人事件』〈耳袋秘帖7〉(だいわ文庫版)


本巻、面白いのだが、タイトルのつけかたがちと無理矢理だなあ、と思う。
魔族というと、どうしても、妖怪とか魔物とかそっちを連想しちゃうよねえ。また、『耳囊』がそういう怪しげなものにまつわる噂について多く書かれているものということもある。

いったい江戸時代の新宿にどういう魔物が出たのか?
こういう先入観がわいてしまう。

しかし、「こんな魔物とか化け物が出て」というような話が出て来たりするのではなく、むしろ、魔物や化け物の噂関係なしに、連続殺人事件なので、足をすくわれちゃうんだな。

そして、そういう先入観を抜きにすると、とても面白いため、「このタイトルはちょっと」。

さて、それではどういう連続殺人事件かというと、江戸に近い宿場町である新宿で、やくざの抗争があるわけだ。
まあ、それ自体はありがちなのだが、新宿からのびているというと、甲州街道。
甲州は北条氏、武田氏と縁が深く、それ以外ではふたつの点で時代ものにはよく登場する。
まず、「金の産地」であった、ということ。
もうひとつは、風魔という忍者がいたということ。
本巻の物語も、実にこの2つに関係するのだ。
忍者、そして、金。
かなりわくわくしてくる。

江戸の西郊から甲州にかけて、大名の封地ではないというのも影響し、過去発生した一家惨殺事件が、やくざの抗争と結びつき、連続殺人事件に発展するという仕掛け。

しかし、このシリーズ、どの事件も、なにかしら、過去に別の事件がねっことして存在するという設定が多いようだ。これは、従来の捕物帖がシャーロック・ホームズばりの検証主義をとらないための方策なのかもしれないが。


耳袋秘帖 新宿魔族殺人事件 (だいわ文庫)/風野 真知雄
2007年12月15日初版